【相談】親の事業を継ぐか継がないか迷っている

父親は3年前に亡くなっており、現在は母親が地元の北海道で食堂を一人で営んでいます。私が継ぐべきか迷っており、母親が元気なうちに食堂をどうするか、相続をどうするか決めておきたいと思っていますが、何から考え、そして準備をしていけばよいでしょう。

継ぐか継がないか、1番大事なのは熱意

―家業がある場合、必ずといって良いほど悩むのが後継者問題です。最近では様々な分野の担い手不足が問題になっていますが、今回のケースでは事業承継をどう考え、準備をしていけば良いのでしょう。

NEXTi法律会計事務所、萩生田彩弁護士(左)と、高久田祐税理士(右)

高久田:ご相談者の方の意向が固まっていないようですが、「継ぐかどうかは事業の状況次第」とお考えであれば、まず決算書をしっかりと見て、利益が生まれる体質かを見定めましょう。

都心の飲食店だとテナント料も高額で、儲かっているように見えて意外と利益がでていないこともあります。一方今回のケースのように地方の個人店であれば、賃料が安かったり自宅の一部利用により賃料が発生していない場合もあります。そうなると利益も生み出しやすかったりします。

こういった判断は素人が一人でおこなうのは難しいものです。おそらく長年事業をされているのであれば顧問税理士さんがいらっしゃるはずですから、その方に話を聞いてみてはいかがでしょう。

萩生田:高久田の話は客観的な判断軸ですが、私は継ぐかどうかはご相談者の方の意志が1番大切だと思っています。事業をおこなう時は収益性も大事ですが、それよりも大事なのは「継ぎたい! やりたい!」という熱意です。利益がたとえ出ていなくても、やりたいと思うならやるために利益体質に改善するなど整えていけば良いし、「お得だから売ってしまいたい」というなら売ればいいんです。

迷うくらいなら本当はその商売はできないのでは……と少し厳しい見方をしてしまいますね。

継ぐ場合、継がない場合、それぞれ準備がある

―もし継ぐと決めた場合、飲食業であれば、味や仕入先との付き合い、常連さんの引き継ぎと、調理以外の準備や学びも必要ですし、ご家族がいらっしゃるなら北海道への移住についての話し合いも必要です。法律とお金の専門家から見て、今回事業承継をすると決めた場合、そして継がないと決めた場合の、具体的な準備や確認しておくべき点はどこにあるのでしょう。

【継ぐ場合】

高久田:事業が個人か法人かで異なります。法人であれば、株を買い取るか相続するかはきちんとしておかないと、後で揉めがちです。

たとえばお母様が持っている資産が自社の株で1億、現金が2000万で、兄弟姉妹が3人いたら、1人4000万ほど相続できるはず。仮に長男が事業を継ぐのであれば、1億の自社株はその長男が相続しないといけません。長男が会社を継いで1億円相当の株を相続したとしたら、他の子は納得するのか……大体文句が出るケースが多いです。

そうすると、継ぎたくても代わりの現金を用意しないと事業継続が難しくなったりします。トラブルを避けるためにも、早めに相続財産の把握をして欲しいのです。

【継がない場合】

萩生田:継がないと決めた場合はお店の畳み方を決めておきましょう。この場合はお母様と話し合って意志を聞き、継がないという自分の意志を伝えた上で、着地点をはっきりさせることが大切です。

また食堂事業が繁盛しているなら、スモールM&Aをすることもできます。

高久田:M&Aをするならば会計帳簿をしっかりつけておかないといけませんから、決算書はどちらにせよちゃんと専門家と一緒に見ていく必要があります。

また自分は継がないけれど従業員に継がせたい場合は、継がせたい人に対して遺言書を書くか、株を譲渡する方法もあります。お母様の土地建物を引き続き事業で使用する場合、後継者の従業員と不動産賃貸契約を結んでおくなどが必要になります。

どちらにせよ、亡くなってからやるよりもお母様が元気なうちに引退していただき、引き継ぎをするのが1番スムーズではあります。

―家業は何となくの義務感で継ぐと、その後ハンドリングができず売上が落ちたり、元いるスタッフがついてこず、事業がダメになってしまったりするケースも多いといいます。

だからこそ、継ぐのか継がないのかは冷静な損得だけでなく自分の中の情熱を確認し、専門家と一緒にしっかりと準備していくことが大切です。